こんにちはヤクタマです。
風のうわさで、以前、働いていた小児科の門前薬局が閉店することを耳にしました。
そこそこ患者さん来てたんですけどね。
それでもつぶれてしまうのは小児科の処方箋は手間ばかりかかって、なかなか利益に直結しないからです。
ぶっちゃけ、サービス残業という自己犠牲のもとに成り立ってるような店だったので、そもそも正常な経営状態とはいい難い。
潰れてよかったのかもしれない。
さて、今回は小児科門前薬局が儲からない理由について淡々と説明していきます。
内科の処方箋と小児科の処方箋を比較してみる
「内科」と「小児科」で簡単な処方比較してみます。
アムロジン 朝 30日
ジャヌビア 夕 30日
調剤料:78点×2=156点
アスベリン
ムコダイン
ムコソルバン
毎食後 4日分(混合)
調剤料:20点 + 45点(計量混合加算) =65点
つまり、こういうことなんですよ。ひどくないですか?
どっちの処方箋が時間かかるかなんて一目瞭然ですよね。内科の処方例のピッキングなんて一瞬で、それでいて点数もずっと高い。
つまり、利益を追求するなら小児科門前はやるべきではない。
調剤に手間がかかる
小児の処方箋は、とにかく作成に手間がかかるのに、それに対する対価(加算)が少なすぎる。
「散剤」「液剤」「軟膏ミックス」どれも調剤補助員の作成は認められないため薬剤師がやらないといけない。
1枚の単価がめちゃくちゃ低いから、枚数で利益をとるしかないのですが兄弟姉妹で複数枚の処方箋をもってこれれると一瞬でキャパオーバーになる。
パンクしないように普段から、多めに人員を配置しておく必要があるのですが、それがまた利益を圧迫する要因の一つになります。
作成に手間がかかるのはもちろん、それにともなって監査にも時間がかかるし、神経もすり減る。
ヒートだけの処方箋に比べると、かかる手間は5倍です。
- 処方箋コピー
- 計量
- 分包
- ゴミチェック
- 全量チェック
- 処方チェック
めっちゃステップ多いでしょ?
1人ではできないから、作成1人、監査1人の同時進行でとりかかります。つまり、二人の手がふさがるから他の作業が手につかなくなる。
調剤補助員が作成できない
調剤補助員ができるのはヒートのピッキングまでです。「散剤」「液剤」「軟膏ミックス」ではほぼ無力です。
手伝ってもらえるとしたら、分包された散剤を折りたたむとか、外用剤をだしてもらうとかになります。
つまり、小児科の場合は、調剤補助員を導入してもやることないからハイコストな薬剤師を導入せざる負えない。
調剤補助事務のピッキングは「0402通知」で認められています。補助員ができる仕事については別記事でまとめています。
処方日数が短い
風邪処方は日数が短い。
ほとんどの風邪はほっとけば治るため長期処方しません。また数日飲んでも症状が変わらないようなら治療方針を見直しが必要です。
だから、処方日数は3~5日が一般的だと思います。
薬局の一番の収入源は「調剤料」です。この「調剤料」は日数に比例して高くなるので日数が短いと調剤料が減ります。
つまり、薬局に利益をもたらすありがたい処方箋は慢性疾患のような長期処方です。
小児科(クリニック)の慢性疾患って喘息くらい?
大学病院の小児科なら、長期処方もいっぱい来るけど、小児科クリニックだとほとんどありません。
小児科の患者数全体からみたら喘息は微々たるものです。しかも成長するに従って軽快することが多い。
処方される「剤数」が少ない
剤数(ざいすう)というのは、薬の種類ではなく、飲み方の種類のことです。
薬局の大事な収入源である「調剤料」は「日数」と「剤数」に比例して増えていきます。
小児の処方箋は、飲み方をまとめることが多いため「剤数」も少ない傾向にあります。
というのも、子供におくすりを飲ませるのは想像以上に大変な作業です。しっかり飲んでもらうために処方自体を工夫してあげることが大切です。
飲ませる手間を減らすために事前に混ぜれるものは混ぜてしまいます。混ぜるためには用法をまとめてあげる必要があります。
もし、ぜ~んぶまとめて1日3回にして混合したら「1剤」になってしまいます。
容器代・分包紙代のコストがかかる
大人の錠剤をわたすのに容器のコストはかからないけど、シロップでわたしたらボトル・計量カップ・スポイト・水剤ラベルなどの様々なコストがかかります。
散剤で渡したら分包紙・インク代のコストがかかります。
実は、分包紙のコストはかなり高額なのはご存知でしょうか?
1包3円だとしたら90包作ったら270円ですからね。シロップの容器代よりも高い。
容器代は患者さんに請求することができるけど小児科門前で容器代とると患者離れを起こして致命傷になりかねないため、必ずしも請求できるとは限りません。
ライバル薬局が近隣になければ請求してもいいと思う。
分包紙のコストは患者請求できないから完全に薬局もちです。
新患が多いので投薬や入力が大変
子供って一定の年齢になると風邪を引きにくくなりだんだんと来なくなります。
さらに乳幼児医療証で無料になる期間をすぎると顕著に来なくなります。
その代わり、新たに保育園や幼稚園に入園した子供たちがくるから一定のサイクルで患者が入れ替わります。
つまり、一定の割合で新患がきます。
高齢者をターゲットにした循環器内科だと、毎月定期的に同じ人がくるため相対的に新患は少ない。
新患は入力に時間かかるし、服薬指導の聞き取りも長くなるし、薬歴の記載も大変です。医療機関は「初診」と「再診」で料金違うけど、薬局は一律なので新患をうける価格的なメリットはありません。
そもそも小児の服薬指導には時間がかかる
小児の場合は、薬効の説明だけでなく、粉やシロップの飲ませ方の説明も必要になってきます。飲めなかったときの対処方法なんかも説明しないといけません。
慢性疾患のようにいつも同じ薬というわけではなく、毎月来るわけでもないので、来るたびに薬効の説明が必要になる。
飲ませ方の工夫を説明すると乳幼児服薬指導加算:12点をとることができますが、それも他にかかるコストを考えてしまうと微々たるものです
計量混合加算は全然足りない
小児は計量混合加算とれるから技術料とれるでしょと思った方へ。計量混合混合は小児科門前薬局の低収入を補填するものではありません。
上記でも説明したとおりで、小児科の処方の特徴として混合するために飲み方をまとめる傾向にあります。そうすると「剤」数がへって調剤料が減ってしまいます。
7日分の薬、2剤を混合するために1剤にまとめた場合は調剤料はこうなる▼
内服薬調剤料(7日)
「35点」×2 →「35点」×1
「35点」減って、そのかわり計量混合加算として45点が算定できる。
つまり、計量混合加算を算定するために調剤料が減ってしまうというパターンが考えられます。
そもそも混合しなくても分包するだけで手間とコストがかかります。計量混合加算はまぜてないと算定できないため、小児科の手間である分包コストを補填するものではありません。
よくある患者希望の別包ですが、本来であれば混ぜる指示のある薬を患者希望で別包にした場合です。
この場合は別包にした分包紙代や手間を請求できないばかりか、計量混合加算すらも算定することができません。
ママの要望が多く疑義照会が多いし変更による医薬品の破棄も多い
患者都合の疑義照会がよくあります。
たとえば、保育園・幼稚園に行っているから1日3回飲めないから1日2回に変更してくださいとか、粉薬は飲めないからシロップにしてくださいとか、薬を作り終わった後に要望が入ると、作り直しになるので作ったものは破棄することになります。
錠剤ならキャンセルされてもまた使えるからいいんだけど、混ぜてしまうと再利用はできない。
つまり、小児科門前は薬の廃棄率が高い。
あと、牛乳アレルギーや卵アレルギーで薬がだせなくなることもある。そういったリスクは大人でも変わりないんだけど、小児の場合は薬を分包してしまったことで再利用ができなくなる。錠剤であれば渡さなければそのまま再利用ができるので無駄になることはない。
やはり、破棄率が高くなるのだ。
以上の理由から小児科の門前薬局は他の診療科よりも利益が薄いのです。
ジェネリック変更が難しい
どこもかしこも小児の医療費無料やってますよね。
自己負担がなければジェネリックを使うメリットはないと思っている人が多いこと。もしくはジェネリックは効かないと思ってる人さえいます。
親はジェネリックでもいいけど子供は先発でというパターンも多いけど、そりゃ、無料だからね。
薬局としてはジェネリックを使ってもらいたい。
後発品体制加算でメリットもあるけど、処方変更で作り直しがあったときはジェネリックを使っていたほうが破棄によるダメージがすくないというメリットがでかい。
時間どおりに終わらない
どうも小児は時間どおりに終わらない傾向にある。子供の医療費無料だから患者はたくさんきます。
小児科はどこも混んでますよね。患者が途切れるまで無制限にうけるクリニックだと、時間どおりに終わらない。
小児科を受診する人は、その日に診てもらいたくてきているからね。先生も診てあげたくなるのが人情でしょう。
そうなると薬局も閉めることができずにダラダラと残業します。残業代がでればいいんだけどね。
でないと消耗するばかりです。
まとめ
以上の理由から、利益を追求していくなら小児科の門前薬局はオススメしません。
あくまでも小児科単体がオススメしないだけで多科あるなら、その中に1つ小児科が入ってるくらいならいいと思います。
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